木製の窓のこと、

長野飯縄高原の工事現場に通っていた頃、松本棟梁のこと、

飯縄高原(イイヅナコウゲン)の雪も融けはじめ、主屋の外壁工事を終えていた。軒裏からの裾までの板張りのカーブが美しい。次に東屋の外壁、一文字葺きに板を一枚一枚、トントンと打ち付けていた。さっとはゆかない、なかなかの難しい部分、「これさえ終われば枕ァ高くして眠れンダァ」と笑ってる松本棟梁は、慎重に仕事を進めていた。今回は、コテージの窓の外側の板戸を取付はじめる準備、ひとつづつ扉に取手金物の位置を指示、確認してまわる。窓の養生シートをはずすとそこから窓の風景が見える。ぱっと工事中の部屋に光が射して、今までずっと薄暗かった部屋が明るくなって、Kさん(クライアント)が「わっー」と目を輝かせて「いいですね」と喜んでくださる。寝室、洗面所や、浴室からも飯縄山が見える。真新しい木の板戸、建具屋さんの丁寧な仕事ぶりが伝わる。「いい仕上がりです。ありがとう」と伝える。製作前に何度も質問のFAXが届く、分からないことがないように確認の上に、確認を重ねてくださった。緊張したお仕事に違いない。私達の建具は、オリジナルな設計だけに建物全体の中でも重要な部分、そのために図面の指示が細かい。板戸から木製ガラス窓へと製作がこれから進む。板戸ひとつが取り付くと、Kさんがうなづいてくださる。手仕事の美しさをこうしてKさんと職人さんと分かち合える。

今、工事は、こうしてコツコツと前に向かって完成に近づいている。窓から見える風景を確認、どうしても視界をさえぎる松がある。その伐採を決める、机上の図面設計では読めない現場での判断も、とてもたいせつな仕事。

建設現場で一人(松本棟梁)仕事をしていると「いつもリスがやってきますョ」「かわいいすョ、おれんのまわり、ぐるぐるまわってんだから」「今日は、ひとが多いんでやってこないナ」遠くからみると、松本棟梁の働く姿がすっかり、まわりの風景にとけ込んでいる。そのまわりをリスが飛びまわっている様子が目に浮かぶ。今日もまた、飯縄山がさぁーと晴れてくっきりと美しい。 帰り道、現場監督の佐藤さんの車に駅まで乗せてもらう、「Kさん、喜んでくださって、」「職人さんのこうした仕事も見てもらって声かけてくださってね、うれしいです。」と、駅に着き、列車のなかで、私もほんとうにそうだと思った。

しばらくして現場へ、夜明け前に出発、きれいに星が見えました。 長野へ午前10時着、今建設中のツリースリーコテージの現場です。戸隠高原のすぐ近く、飯縄山が青空にくっきりと見えました。現地の積雪は、1mほどでしょうか。「このところ寒い日が続いてぇ、こんなに晴れて、こんな あったけぇ日は、めったにないすよ。」「昨日の夕焼けは、みごとだったぁ」棟梁の松本さんは、こんなことをいってにこにこと迎えてくださる。この冬のなか、こつこつと外壁の板を一枚一枚、丁寧に張ってくださっている。イメージしていた外壁の美しいカーブが出来ている。こころから棟梁に感謝、頭が下がります。このようにして大工の技を尽くして、ひとつの家が立ち上がります。そこに木製窓が、、、

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